(お相手が先手▲、筆者が後手△ 局面は先手番 最終指し手は28手目△7二玉まで)
*今回は筆者後手持ちですので、後手番目線での自戦記です。ご了承ください m_m。
少し古いですが、今回はお互いが飛車を振りあった場合の自戦記をお送りします。この対局はこの記事を書き始めた日(2024年12月30日)から5日前ですが、私のような向かい飛車党に限らず、全ての振り飛車党なら必ずぶち当たる局面ですので参考になれば幸いです。
なお、私が後手番でお相手が先手番の為、後手番目線で書いていきます。図面の見方が逆さまでややこしくなると思いますが、そのあたりご了承頂けたら幸いです。
ちょっとしたコラムー私の将棋の考え方
未知の世界だからこそ味わえる将棋の醍醐味
自分で試行錯誤して自信を持った戦法がお互い振り飛車の場合、必ず当たる相振り飛車。勝ち負けに関わらず一つの戦法を指し続けていくと、自分の知っている領域を越えて未知の世界に突入することがよくあります。
それは逆にこの戦法で勝てる!と自信を持って指し続けている証拠でそれだから経験値が増えていくチャンスです。今はAIが発達して終局まで解き明かしている昨今ですが、人間の頭脳からするとその未知の世界に悩んだり苦しんだりあるいは閃きが生まれたり、そういった人間ならではの直感が働いてきます。
それこそが将棋で味わう醍醐味であり、そこからどうするのか、その次の一手をどう指すのか長考や頭にめぐる思考から自分で導き出す。それが悪手でも勝敗の負けに繋がる敗着の手であってもまず自分がその勝負で死ぬことはないから、後で共に指し合った相手と共に検討すれば次の対局で修正するば万事OKなのです。
プロ間でも相振り飛車の定跡はない(女流棋界では別)
プロでも全て局面をうまく指しこなすことは非常に困難で、自分の戦法、戦型、定跡それを頭の中に入っていても未知の局面に必ず出会います。相振り飛車はその典型で、プロの世界では指された局面は非常に少なく、女流棋界で多く指されています。
ただ、プロの正棋士の間で相振り飛車の局数は少ないので、定跡が確立してない未知の場面が多いのがこの相振り飛車。アマチュア棋界では多く指されているにも関わらず、お手本となる棋譜や本が少ないので、自分で切り開いて手を進めていく必要が出てきます。
未知の局面だからこそ思いっきり指す
私もこの相振り飛車を沢山指してきましたが、この局面は同指したらいいのかわからないよ(泣)という場面が何度か遭遇したことはあります。そのときは分からないなりに悪手になってもいいや(笑)と開き直って指しています。
まあ、悪手のなることも多いですが(笑)逆にこの手を指してよかったと結果オーライの時もあります。そのときはさりげなくこそっと自分自身に自画自賛しちゃいますが(笑)
相振り飛車の局面で守備に強いのが向かい飛車
相振り飛車の場合も呼び方は”向かい飛車”
(本譜1図 14手目△2二飛まで)
その未知の世界が多い相振り飛車。今回の局面もその未知の世界に誘う展開です。初手からの手順は省略するとして、14手目△2二飛から。余談ですがこの本譜のように後手側2筋(先手を持つと8筋)に自分の飛車を回した場合でも”向かい飛車”といいます。二間飛車、または八間飛車とも言いません。
(参考図1 飛車同士が向かい合うから向かい飛車)
相手が居飛車の時、飛車同士が向かい合うので「向かい飛車」と言いますが(参考図1)お互いに飛車を振った場合でも(下記 参考図2)なぜか向かい飛車とも言います。プロ間では居飛車対振り飛車の戦いが基本でそう呼ばれたと思いますが、このような相振り飛車で名前が変わるのはややこしいですね^^。
(参考図2 この場合でも呼び名は「八間飛車」ではなく向かい飛車)
(このような相手が振り飛車、あるいは居飛車の度に呼び方が変わるのはややこしい。)
今は相手が振り飛車で降ってきても、自分の陣地から見て左から2つの筋(棋譜だと先手▲から見て8筋)に飛車を回すと向かい飛車、その一つ左隣(棋譜だと先手▲から見て7筋)だと三間飛車、その隣左から4つ目の筋(棋譜から見て先手▲から見て6筋)だと四間飛車と覚えておいて下さい。
(参考図3 部分図 中飛車)
他に飛車を中央に持っていく中飛車(参考図3)とかありますが、今は代表的な振り飛車の呼び方だけ覚えておけばOKです。
本譜は三間飛車対向かい飛車
(本譜1図に戻って再掲 14手目△2二飛まで)
さっきお話したようにお相手(先手▲)は三間飛車に振ってきました。ちょっと復習ですが、なぜ三間飛車かは自分の陣地から見て左から3つ目のマスに飛車を回すことを言うとお話ししましたね。最初はそんな感じで覚えておいた方がいいです。
(参考図4 石田流本組)
この三間飛車は将来的に石田流(参考図4)などの攻撃的な布陣になります。少し守備的なカウンター狙いだと軽い捌きで相手の攻めに対して逆襲するプロの達人もいます。この三間飛車はどちらといえば水を流れるような受け応えで切り返す、プロアマ問わず多く指されている戦法です。
私はその辺りのカウンター狙いの三間飛車戦法の指し方を勉強中ですが、大方プロアマ問わず参考図4のような石田流に組むことが多いです。この戦い方は一度ツボに嵌れば面白く攻撃が決まるので、人気の戦法です。
自陣に隙が無い対振り向かい飛車
対して私はいつも指している通り△2二飛の向かい飛車。相手が飛車を振ってきても向かい飛車は自陣に隙が無く、対振り飛車に有効な戦法です。
(参考図5 対振り飛車での向かい飛車の布陣)
参考図5が対振り向かい飛車戦法の、私がよく使う基本的な布陣です。この布陣は頭が弱い右桂を飛車で守っているのがポイント。いざ角交換になった時、飛車の守備で打ち込みを消しているのでこちらに角を打つ隙がありません。
もう一つは飛車の横利きで上部の守りが厚くなってます。これはよく級位者同士の対局に出てくる手順ですが、下の参考図から△4六歩▲同歩で△同角とうっかり角切りに進むと▲同飛と角を取ることができます。
(参考図6)
角切りで一気に相手の守りを崩そうと思いきるのですが、飛車の横利きがあることを忘れることが多く、あっっっちゃあ~。しまったあ~!と頭抱えることに(笑)。将棋道場でうわ~って頭抱える人たまに見ますよ(笑)。
盤面を隅々まで見ることが本当に大事なのですが、よくこういうポカ見かけます(笑)さすがに段位者同士だとそういうポカはあまり見ないのですが、参考図5の布陣で飛車の守りの役割が大きく守備に貢献してます。
そこから、守備の金気(金銀)を盛り上げていく指し方になっていきますが、それは今回の本譜にて。
お相手は石田流の構え
(本譜2図 31手目▲9七角まで)
本譜1図14手目から進んで31手目▲9七角より(本譜2図)。お相手は三間飛車から攻撃態勢を石田流(参考図4図)に展開してきました。より攻撃的に行きますよ、という意思表示。対して私はそれを受けきって攻めを切らす狙いで行きます。
失敗すれば大ダメージですが、「真に将棋が強い人は受けが強い」。ここを目指しているのでここの対策は受け重視で展開を進めようと思います。
石田流を受け潰す重厚な受け
(本譜3図 32手目△6二金まで)
本譜2図▲9七角に対して当初の作戦方針に従って△6二金(本譜3図)。ここから理想形の陣形(参考図5)に手数はかかりますが持っていきたいところ。飛車の横利きを活用し、相手の攻めを重厚に受けきって反撃する。
(本譜4図 33手目 ▲6四歩まで)
作戦方針はそのように持っていきたいのですが、ここでお相手が▲6四歩と一発ジャブを繰り出してきました。それに対して自然な流れで△同歩▲同角。
(本譜5図 34手目△6三金まで)
それに対して私はここで△6三金と少し欲張った指し方をしました。守備に就いている金気(金銀)を盛り上げて相手の飛角を抑え込み、攻めを瓦解させる。当初の方針そのままの指し方です。といっても石田流は破壊力バツグンの戦法なので、失敗すれば一方的にやられて油断できません。
金気(金銀)を使って受け潰す
(本譜6図 38手目△7四歩まで)
以下▲8六角△8四歩。ここで次手△7四歩と8二にいる銀を進出させる道作りと先手▲飛車を圧迫しに行きます。次手△8三銀と上部に厚みを付ければ十分に指せる展開になってきました。
飛角を圧迫されている先手陣、このまますんなり許すとは限りません。▲5六銀と浮いている後手4筋の歩取り、将来▲6四歩と角を使った後手陣の攻撃の準備の2通りの狙いを持った手を指してきました。
(本譜7図 40手目▲5四銀まで)
これには「銀には銀で対抗」の格言通り△5四銀。玉の守りの上部をより厚くした手です。この局面ですでに上部を厚くしている後手有利な局面ですが、さらに上部を手厚くする△7三銀と完全に石田流を受け潰しにかかります。
お相手は局面を何とか打開しようと▲6五歩と角道を使って攻めようとしますが、ここは予定の△7三銀。
▲8五桂は成立しない
(変化図1 ▲6四歩まで)
この△7三銀に対して▲8五桂△8四銀▲6四歩(変化図1)と金取りに取り込む手があり、有力そうに見えますが、その手に対しては・・・
(変化図2 △9九角成まで)
▲8五桂には、△9九角成▲7三桂成△同金上▲6四歩△6四金右とすれば十分。(変化図3。ちょっとAIの力を借りましたf^^))なので▲8五桂からの攻めは成立しません。
(変化図3 △6四金右まで)
盛り上がり策で優勢な局面
本譜に戻り、▲6四歩△同銀▲6五歩と進んだのが下の図
(本譜8図 47手目▲6五歩まで)
ここまで来ると飛角両取り確定でここから優勢な局面になったと感じました。以下△7四銀▲同角△同歩▲同飛△7四歩▲7四飛△8八角(本譜8図からの指了図→本譜9図)。
(本譜9図 54手目△8八角)
ここから優勢な局面は変わらず結果的に下の投了図になりました。
(本譜投了図 105手まで後手の勝ち)
まとめ
今回の指し方はいかがだったでしょうか?受け重視の指し方でこれを読んでいるあなたにはもしかしたら不満があるかもしれません。これはこれで私の指し方なので一つの参考例として頂けたら幸いです。
今回の指し方で一つ欠点と思われるところは
- 飛車を元の角の位置に移動するので角をどける一手がかかる。
- 飛車を攻めに使えず、戦局によって飛車を遊び駒にしがち
このあたりが課題ですが、それはこれからプロの先生や他のプレイヤーの指し方を参考にすることで、研究する必要が出てくると感じています。また今回のような石田流を受け潰す指し方を失敗することが多々あり、その時はなすすべもなくやられてしまいます。
今回は成功例として自戦記に上げました。あなたの今後の指し方でのヒントになれば幸いです。それではお相手にありがとうございましたを感謝申し上げて自戦記を終わりたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。また次の投稿でお会いしましょう。